私の父も髪を染めたかったのか?

私の父は18年前他界したが、大変面白い父だった。仕事は堅い仕事だったが、頭は非常に柔らかく優しい父だった。

あれは私の長男が高校生だった頃、息子は夏休み中に赤だか金色だか忘れてしまったが、髪を染めてしまった。

流行りとはいえ「息子よ、お前もか!」と複雑な気持ちだったのを覚えている。

そんな夏休みに家族で実家に遊びに行った。息子の髪を見て父は何と言うか心配だった。

ところが、息子の顔を見た父は「じいちゃんも、もう少し髪があったら、お前みたいに髪染めたかったなー」と一言。

「染めたいんかい!」

さらに、読んでいた新聞の高僧の肖像画の一面広告を息子に見せ「なあ、このお坊さんの耳見てみろ、宝石のピアスしてるだろ」確かにエメラルド色のピアスのような物を付けていた。

「こんなに偉いお坊さんが、ピアスしてるんだからお前もピアスしていいんだぞー」と訳の分からない事を息子に説明していた父。

息子は苦笑い・・

私は父に言いたかった。「もう少し身だしなみに気をつけろ!」とか言うべきじゃないの?

しかし、父が若者のファッションについて理解を示しているのが以外だった。父の若い頃は、時代が自由を許さなかった事もあるのだろう。

父が出来なかった自由な行動を、孫が謳歌してることが嬉しかったのだろうか。

若い頃の私にも言いたい事が、沢山あったと思うが「あーせい、こーせい」と言った事が無く自由にさせてくれた父だった。

だからこの時の父の気持ちが分かるような気がする。