エンジン音・・

若い頃、後輩の同僚と出張にいった時の話。この同僚は旅行と乗り物が好きで休日になると列車で一人旅に出ることが趣味だった。

私と出張に行った時も、乗り物が好きなだけあって飛行機に乗った際にも「この飛行機の型式のエンジン音が好きなんですよねー」と離陸する前、嬉しそうな顔をして横に座っていた。

とてもマニアックな同僚だった。

そして離陸態勢に入り、飛行機のエンジン音が高まって行くと、目を閉じた同僚の心地よい顔がとても印象的だった。

また出張に合わせた手作りの時刻表を持ち、現地に着くまでの間も乗り換えた電車に乗ると、一番前の車両の運転席の見える所に立って前方の景色を眺めていた。

本当に旅が好きなんだなあ・・

こんな同僚を見ていると、楽しみを持っている人が羨ましく思えた。私と言えば、これから先の面倒な会議の事だけで頭が一杯。道中を楽しめる余裕はなかった。

どうせ同じ時間を過ごすなら、先で待っている憂鬱な時間の事を考えて過ごすより、同僚のように楽しく時間を過ごす事も大切だと感じたものだった。