お義父さん、結婚してよかったの?
私が今までの人生の中で一番緊張したのは、妻の父親に結婚の許しをもらいに行った時だった。この時は緊張したのなんのって半端じゃない緊張感だった。
今まで緊張の場面を何度も経験してきたが、この時の緊張感はレベルが最上段だったと思っている。
先方へ行く日の10日前から何と言って義父に結婚の許しをもらうか、言葉選びが大変だった。前日まで考えていたがまとまらずとうとう当日を迎えた。
列車で2時間ほどの所にある長閑かな町に向かった。「何て切り出そうかな」列車の中でずーっと考えていた。「娘さんを幸せにしますので・・」これはありきたりの言葉か・・などと考えを巡らせていた。妻との会話も上の空。
車窓から見える風景が、だんだん妻の実家に近づいている事を知らせていた。「いやーどうしよう。まだまとまらない!」そんな私の不安をよそに、列車は定刻通り妻の実家の近くの駅に到着した。
駅から出てすぐ妻の実家が見えてきた。初めて見る妻の実家、足取りがやや遅くなった。
家に着くと居間に通してもらいソファーに座った。何を話したのか覚えていないが雑談が続いた。「いやあー、タイミングが分からない」このままでは日が暮れる。もう体はガッチガチ。
一瞬会話の間が空いた・・・
「よし今しかない!」
ソファーから床に正座して「娘さんと結婚させてください」と言ったと思うが覚えていない。
義父はそれに対して何の返答もなく「まあ、そんなに硬くならないでー」とだけ言われたのを覚えている。私が極度に緊張していて気の毒に思ったのだろう。
41年前のあの日、果たして義父は結婚を許してくれていたのだろうか?
元気なうちに聞いておくか・・・。